「いらっしゃいませ…!」


声は軽快に飛び出すが…内心は、また来たか。と思っている俺がいる。
伊達の組長と、見目形整った秘書殿。
まるで俺の店を逢瀬部屋に使っているのではないか…と思ってしまう程、ここ最近では頻繁に訪れる始末だ。
最初がいけなかった、と思う。
気を使ってやる必要など無かったのに……やってしまった。
あの日二人に対して、貸切のような状態にしてしまったもんだから…!


この通り、今日も二人で俺の目の前に居る。



「何を握りましょう、お二人さん」

「一緒にしないでいい!連れという訳ではないんだからなっ…!」

相変わらず秘書殿は吼えていらっしゃる。
だが、結局は怒鳴りながらも馴れ合っている状態だ。
伊達の組長も、この秘書殿に怒鳴られているのを寧ろ愉しんでいるようで…今も上機嫌に酒を飲み干している。

「まぁ、そんなに吼えるなよ頼光…。そんな喚き声より、俺はお前の鳴き声の方が聞きたいぜ」

「なっ…!」

いつもの遣り取りなので、別段俺は動じもしない。
ああ…、また始まった。その程度の事だ。
注文を聞く事もせずに、俺はいつも通りお奨めのネタをどんどんカウンターにのせてゆく。
組長に至っては気にもせず、秘書殿といえば…相手との駆け引きに精一杯の様子で寿司の事まで気が回らないらし
い。

…ここは鮨屋だ。
いい加減、まともに鮨を食べてくれ!
そんな気持ちも、とうの昔に失せてしまい。今では、黙々と二人の前で鮨を握る。
確かに困った客達だが、それは二人揃った時だけの話だ。
単品で考えれば、素晴らしく良い客には変わりない。お陰様で、この二人に贔屓にして貰う事によっていい客筋も増
えた。
売り上げもウナギ上りになっている。
だが……こんな男同士の遣り取りを好んで見ていたいわけでもない。
引き攣る頬を、青筋の浮かぶこめかみを、無理矢理押さえ込んで俺はビジネス魂で鮨を握るのだ。
夢の為なら、どんな事だって我慢してやるさ!
そう思えば、自然…鮨を握る手にも力が入った。

「おい頼光、もっと食えよ。体力付かないぜ」
「五月蝿い!お前には関係ないっ…!」
「関係ない訳ないだろうが、体力つけて貰わねぇと…あっちの方で、俺が満足出来ないぜ」
「…ブッ…!」

秘書殿が、口内に入れていた新香の細巻を吹いたらしい。
あああ…。

「そんなもんばっか食ってねぇで、いいもん食えよ」

組長が尚も煽るようにニタニタ笑っている。
秘書殿の手の中で握り締められた細巻が、潰れてゆくのを目の端で捕らえながら俺は小さな溜息をついた。

「…疲れているんだ。何度も言ってるだろうっ!」
「だから…なおの事食えよ」
「食べる時には食べる!今はそんな気分じゃないだけだっ!!」
「じゃあ。どんな気分なんだ?!」

ニンマリと伊達の組長が笑った。こうなってくると、秘書殿のお持ち帰りは決定的なんだが…
何故か今夜は様子が違った。

「今夜は絶対にお前の思う通りにはならんぞ…」

バンッとカウンターを拳で一つ叩き、秘書殿が立ち上がる。

「おいおい。そんな恐い顔したって、俺には効かん」
「何故いつもいつも俺なんだ。何故俺にばかり付き纏う」
「フフ…。いつも言ってる事じゃないか、お前の容姿も性格も俺好みだからさ」
「……こんな男のツラのどこがいい!?」
「お前、鏡見たことないのかよ……。フッ、例えばそうだな…ん~。」

伊達組長が少し考え込む様子を見せる。その後…すう、と視線が俺の方を向き…

「おっ!この兄さんをもっとすっきりさせて…女顔にすると、けっこう似てるぜ」

何で俺に振ってくるんだ!?
おいおいおい…!と胸の中でツッコミを入れながら、それとなく二人から視線を外した。
そうなのだ。前にも似ていると言われた事があるほど…この秘書殿に俺は似ていた。…自覚もしていた。

「な?!いいツラだと思わねぇか…?」
「ふむ…言われてみれば確に……」

どうやら容姿がよい云々という事ではなく、秘書殿は俺が自分に似ている事を知って、そっちの方に興味を持ってい
かれたらしい。
そんなに、マジマジと見つめてくるのは止めてくれ!
正直その場から、俺は逃げたくなった…。

「お、お客さん。お客さん程の方に似ていると言って頂けるとは…光栄ですよ」

顔を引き攣らせながら、それだけ応えた。

「…あ!そうだ…」

秘書殿が何かいい事を思いついたらしい。手をポンと打って爽快な顔をする。

「なぁ伊達…。いつも俺ばかりじゃあ面白くないだろう?」
「んん?どういう事だ…」
「今夜は俺も忙しい。だから………今夜はこの兄さんに相手して貰え」

「……!」


俺は秘書殿の、この非道な一言に絶句した。
もう、本当に……勘弁してくれ……。









続く…(続くんかいな!?)




■赤坂の鮨屋Ⅲ


■言い訳

「坂巻祭」第二段です(笑)・・・うわはははっ!(もうやけっぱちで笑うしかないらしい)私は悪くないっ!悪くないぞ!
(笑)SJ03号で…筋トレなんてする坂巻が悪いんだ!!!(罪をなすりつける;)
SJで額にまが玉マーク付けて頑張ってる十蔵ちゃんはおろか、ここのメイン頼光更新もしないで坂巻ですか?!

自分でツッコンでおきますので、皆さん突っ込まないで下さいね…(T‐T)ホロリホロホロ…。




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