伊達×頼光「料亭にて…(姫と野獣)」…桃の代わりに伊達の待つ料亭へと向かう頼光。(03.1.23)
■料亭にて・・・(姫と野獣)
「こいつぁー活きのいい秘書さんだぜ・・・」
「なっ・・・!」
あまりの事に、今や剣桃太郎の敏腕秘書となっていた金剛寺頼光は絶句した。
大物政治家との会談が急に入り、前々からの約束をキャンセルする為・・・頼光は桃の代わりに、約束の都内某高級
料亭へと向かった。
向かう料亭で待っている相手が誰か、知らなかったわけではない。いや、知っていたからこそ頼光自身が向かったの
だ。
剣桃太郎の悪友とも言うべき、男塾時代からの親友伊達臣人。この男は、関東一の勢力を誇る伊達組の初代組長
でもあり、また武術の達人でもあった。
本来、政治家と極道・・・。真反対とも見えるが、実際は切っても切れない深い仲。議員の父親を持ち、その身辺を見
てきた頼光にとって伊達という存在は、それほど疎ましく思うものでもなかったのだ。
「頭とハサミは使いよう」とはよく言うが、ヤクザもしかり。巧く手段を使い、世間に表沙汰にならなければ、寧ろ十二
分に利用できる立場の人間。この伊達という男は、頼光が心酔する剣桃太郎にとって必要不可欠な存在になるは
ず。
計算高くそう思えば、折角のチャンスを逃すわけにもいかない。頼光は、今回の約束を破ってしまった事に対する謝
罪と接待とを、自ら進んで引き受けた。
高級料亭の長い廊下を抜けて、進んだ先は最も奥まった静かな座敷。
庭は純和風の造りで、時折獅子脅しが鳴く。
すっかり陽も落ち、石灯籠の明かりが温かく浮き上がる時刻。約束の時間にはまだ少しあったが、頼光は足早に伊
達の待つ奥の座敷へと向かった。
案内を済ませた女将を早々に帰し。スラリと障子を開く。
障子に映った影よりも、実際目にする伊達の姿は逞しく、ビリビリと伝わるようなオーラがあった。
剣と伊達。
(どちらも人として大きいながらも、剣桃太郎とはまた違う空気・・・。)
伊達を一目見て、頼光はそれだけを思った。
「お待たせした」
室内に入るや否やその場に座し、まず深く頭を下げる。もちろん礼を尽くす為に。
その後、剣からの伝言を間髪いれず伝えるつもりであったが・・・
「聞いてるぜ」
手酌で酒を注ぎながら、伊達は頼光をチラリとも見ずに言葉を吐いた。
「ぇ・・?」
思わず小さく聞き返す。だが、目の前の男はガバリと起き上がり正座の頼光の前に立ちはだかっていた。
「桃から連絡を受けた。こいつでな・・・」
ヒラヒラと手もとで揺れるのは、小さな携帯電話。
桃が念のために、伊達へ直接電話を入れるのは充分考えられる事だった。
幾分話しやすくなった。と、あからさまに頼光はホッとする。
それならば話は早い。と身を乗り出し、言葉を紡ごうとした矢先。
伊達の、太く重い声で問いが投げかけられる。
「で・・・なんでてめぇが来やがった?」
「それは・・・」
「別に、俺と桃との仲で…急なキャンセルなんざ大有りな事なんだぜ。それをなんで、わざわざ秘書さんがこんなとこ
までのこのこ出向いて来たのか聞いてんだ」
威圧感のある口ぶり。
頼光の背に、嫌な汗が滴り落ちた。
来たるべき質問。相手から投げかけられる当然の問い。
考えていなかったわけではない。順を追って、話し出すつもりであった。
・・・だが、伊達の威圧感がそれを封じていたのだ。
いつものペースが崩されて、すっかりタイミングが計れなくなっている…。
こんな状況は手馴れたものであるはずなのに、相手が悪かったのか・・・頼光の身が凍ったように硬くなる。
強く握り締められた両の手が、自身の膝の上でぎゅうっと強張り、掌にはじめった汗が滲んでいた。
目の前で、あからさまに硬くなる男を伊達は鼻で笑い、ふいに身を屈ませた。膝付きになって頼光と相対する。
しかしその間も、頼光の視線は一度も伊達から逸らされはしなかった。それだけは流石と言えた。
徐々に距離を縮める鋭い伊達の瞳を見つめたまま、微動だにしない。いや、動きたくても動けずにいたという方が正
しかったかもしれないが・・・。
六筋の傷を浮かべた顔が、驚く程・・・至近距離まで近づいて。息が掛かるほど間近で、会話が交わされ出した。
頼光の身体に、我知らず震えが走る。焦りが表情に滲み出すのを、頼光はなんとか気力で封じ込めていた。
「な・・・なんだ・・・?」
「品定めしてんだよ・・・。桃の腰巾着か、敏腕秘書官さんか知らねぇが。俺は、俺自身の目で見て、判断したものしか
受け入れねぇ・・・」
「腰巾着とは・・・ひどい言われようだな。」
「だが・・・ただの腰巾着ではないようだ・・・。こいつは、なかなかの別嬪さんだぜ」
厭な笑みを浮かべそう言い放つと、伊達は躊躇いなど微塵も見せず頼光の細めの顎をその手で掴んだ。
バシッ!…と。弾かれたように、伊達の手が頼光によって払われる。
少し腰を引き気味にしながらも、口を引き結んで屈辱に怒りを露にし。利き手で、己の顎を無遠慮に掴む伊達の手を
払っていた。
「ハッ!こいつはいい・・・。えらく気の強いお姫様だ。気にいったぜ」
「なっ・・・貴様っ!下手に出ればいい気になりおって・・・・・・」
「フッ・・・。どうせ、俺の力を利用してやろうって魂胆でこんな所までのこのこ来たんだろうが。政治屋さんの考えそう
なこった。最初から分かってたぜ」
「クッ・・・」
伊達がニヤリと頬を歪め、さも楽しげに頼光を見つめる。その眼差しは既に、獲物を求めて肉食獣が舌なめずりする、
凶暴な光を放つ時のそれだった。
二人の間に、張り詰めた空気が流れる。伊達は至って楽しげであったが、頼光は益々その背に嫌な汗を滴らせてい
た。
「なぁ、お姫様。てめぇの思惑通りに動いてやってもいいぜ」
「な・・・んだと・・・?」
思いもかけない言葉を伊達が吐く。頼光は、戸惑った。
伊達の手を払った時点で、もうこの場を立ち去ってもいいと思っていたし・・・この男と関わり合いたくないと思ったのも
確かだった。
だが、屈辱に怒りを露にした時点ですぐに立ち去らなかったのは、やはりこの男の力を己自身が欲っしていたから
だ。この男の力は利用出来る。
改めてそう思う。故に、伊達側からの思いもしない申し出に、正直喉が鳴りそうですらあった。
「俺を思う通りに動かしたいならな・・・。何も、頭を下げて頼み込む事も、上物の酒を出して持て成す必要もねーんだ
よ」
「・・・・・・」
「お前さんが、ちょいと俺のいう事を聴けばそれでいいんだ」
「・・・は?」
「ククッ・・・。まだ分かんねぇのか?・・・・・・お姫様が気に入ったんだ。抱かせろって言ってんだよ」
「ばっ・・・!」
頼光は・・・「バカな!」と叫びたかったのだろうが、気持ちが高揚し過ぎてか、言葉には成りきらなかった。
そしてすぐさま、「逃げる」と謗られる事も覚悟の上、その場を去るべく立ち上がろうとしたが・・・
「待ちなっ・・・!」
ガタンッ!ガチャンッ!!
立ち上がる寸前に、伊達によって頼光は畳の上に引き倒される。並べられた膳が、派手に畳の上にバラ巻かれた。
酒の銚子も何本かが倒れ、辺りに濃厚な酒の匂いを漂わせていた。
「よっ・・・せ・・・!やめろっ!」
頼光は面を蒼白にして必死に抗うが、伊達の方では正反対に楽しげで、余裕の顔を見せている。
スーツの上着を剥がれた状態で、伊達の逞しい体躯が熊のように己の体の上へと圧し掛かってくる。その事実に、
頼光は吐き気すら覚えた。
既に上体を起こす事も出来ない状態であったが。頼光はそんな中、それでも両手を突っ撥ねて抗った。
「こいつぁー活きのいい秘書さんだぜ・・・」
「なっ・・・!」
「楽しみ甲斐がありそうだ」
「・・・!!!」
伊達の凶悪なまでの笑みに、頼光はとうとう言葉を無くしてしまう。
心の何処かでは剣桃太郎の為に。政治の為に。
これでいい。これでいいのだ。と思ってはいても・・・。
己自身の有り余るプライドに首を絞められる感覚を味わいながら。頼光は、伊達の奪うような口付けを、噛み付く事な
く受け入れるしかなかった。
■料亭にて・・・(姫と野獣)
「こいつぁー活きのいい秘書さんだぜ・・・」
「なっ・・・!」
あまりの事に、今や剣桃太郎の敏腕秘書となっていた金剛寺頼光は絶句した。
大物政治家との会談が急に入り、前々からの約束をキャンセルする為・・・頼光は桃の代わりに、約束の都内某高級
料亭へと向かった。
向かう料亭で待っている相手が誰か、知らなかったわけではない。いや、知っていたからこそ頼光自身が向かったの
だ。
剣桃太郎の悪友とも言うべき、男塾時代からの親友伊達臣人。この男は、関東一の勢力を誇る伊達組の初代組長
でもあり、また武術の達人でもあった。
本来、政治家と極道・・・。真反対とも見えるが、実際は切っても切れない深い仲。議員の父親を持ち、その身辺を見
てきた頼光にとって伊達という存在は、それほど疎ましく思うものでもなかったのだ。
「頭とハサミは使いよう」とはよく言うが、ヤクザもしかり。巧く手段を使い、世間に表沙汰にならなければ、寧ろ十二
分に利用できる立場の人間。この伊達という男は、頼光が心酔する剣桃太郎にとって必要不可欠な存在になるは
ず。
計算高くそう思えば、折角のチャンスを逃すわけにもいかない。頼光は、今回の約束を破ってしまった事に対する謝
罪と接待とを、自ら進んで引き受けた。
高級料亭の長い廊下を抜けて、進んだ先は最も奥まった静かな座敷。
庭は純和風の造りで、時折獅子脅しが鳴く。
すっかり陽も落ち、石灯籠の明かりが温かく浮き上がる時刻。約束の時間にはまだ少しあったが、頼光は足早に伊
達の待つ奥の座敷へと向かった。
案内を済ませた女将を早々に帰し。スラリと障子を開く。
障子に映った影よりも、実際目にする伊達の姿は逞しく、ビリビリと伝わるようなオーラがあった。
剣と伊達。
(どちらも人として大きいながらも、剣桃太郎とはまた違う空気・・・。)
伊達を一目見て、頼光はそれだけを思った。
「お待たせした」
室内に入るや否やその場に座し、まず深く頭を下げる。もちろん礼を尽くす為に。
その後、剣からの伝言を間髪いれず伝えるつもりであったが・・・
「聞いてるぜ」
手酌で酒を注ぎながら、伊達は頼光をチラリとも見ずに言葉を吐いた。
「ぇ・・?」
思わず小さく聞き返す。だが、目の前の男はガバリと起き上がり正座の頼光の前に立ちはだかっていた。
「桃から連絡を受けた。こいつでな・・・」
ヒラヒラと手もとで揺れるのは、小さな携帯電話。
桃が念のために、伊達へ直接電話を入れるのは充分考えられる事だった。
幾分話しやすくなった。と、あからさまに頼光はホッとする。
それならば話は早い。と身を乗り出し、言葉を紡ごうとした矢先。
伊達の、太く重い声で問いが投げかけられる。
「で・・・なんでてめぇが来やがった?」
「それは・・・」
「別に、俺と桃との仲で…急なキャンセルなんざ大有りな事なんだぜ。それをなんで、わざわざ秘書さんがこんなとこ
までのこのこ出向いて来たのか聞いてんだ」
威圧感のある口ぶり。
頼光の背に、嫌な汗が滴り落ちた。
来たるべき質問。相手から投げかけられる当然の問い。
考えていなかったわけではない。順を追って、話し出すつもりであった。
・・・だが、伊達の威圧感がそれを封じていたのだ。
いつものペースが崩されて、すっかりタイミングが計れなくなっている…。
こんな状況は手馴れたものであるはずなのに、相手が悪かったのか・・・頼光の身が凍ったように硬くなる。
強く握り締められた両の手が、自身の膝の上でぎゅうっと強張り、掌にはじめった汗が滲んでいた。
目の前で、あからさまに硬くなる男を伊達は鼻で笑い、ふいに身を屈ませた。膝付きになって頼光と相対する。
しかしその間も、頼光の視線は一度も伊達から逸らされはしなかった。それだけは流石と言えた。
徐々に距離を縮める鋭い伊達の瞳を見つめたまま、微動だにしない。いや、動きたくても動けずにいたという方が正
しかったかもしれないが・・・。
六筋の傷を浮かべた顔が、驚く程・・・至近距離まで近づいて。息が掛かるほど間近で、会話が交わされ出した。
頼光の身体に、我知らず震えが走る。焦りが表情に滲み出すのを、頼光はなんとか気力で封じ込めていた。
「な・・・なんだ・・・?」
「品定めしてんだよ・・・。桃の腰巾着か、敏腕秘書官さんか知らねぇが。俺は、俺自身の目で見て、判断したものしか
受け入れねぇ・・・」
「腰巾着とは・・・ひどい言われようだな。」
「だが・・・ただの腰巾着ではないようだ・・・。こいつは、なかなかの別嬪さんだぜ」
厭な笑みを浮かべそう言い放つと、伊達は躊躇いなど微塵も見せず頼光の細めの顎をその手で掴んだ。
バシッ!…と。弾かれたように、伊達の手が頼光によって払われる。
少し腰を引き気味にしながらも、口を引き結んで屈辱に怒りを露にし。利き手で、己の顎を無遠慮に掴む伊達の手を
払っていた。
「ハッ!こいつはいい・・・。えらく気の強いお姫様だ。気にいったぜ」
「なっ・・・貴様っ!下手に出ればいい気になりおって・・・・・・」
「フッ・・・。どうせ、俺の力を利用してやろうって魂胆でこんな所までのこのこ来たんだろうが。政治屋さんの考えそう
なこった。最初から分かってたぜ」
「クッ・・・」
伊達がニヤリと頬を歪め、さも楽しげに頼光を見つめる。その眼差しは既に、獲物を求めて肉食獣が舌なめずりする、
凶暴な光を放つ時のそれだった。
二人の間に、張り詰めた空気が流れる。伊達は至って楽しげであったが、頼光は益々その背に嫌な汗を滴らせてい
た。
「なぁ、お姫様。てめぇの思惑通りに動いてやってもいいぜ」
「な・・・んだと・・・?」
思いもかけない言葉を伊達が吐く。頼光は、戸惑った。
伊達の手を払った時点で、もうこの場を立ち去ってもいいと思っていたし・・・この男と関わり合いたくないと思ったのも
確かだった。
だが、屈辱に怒りを露にした時点ですぐに立ち去らなかったのは、やはりこの男の力を己自身が欲っしていたから
だ。この男の力は利用出来る。
改めてそう思う。故に、伊達側からの思いもしない申し出に、正直喉が鳴りそうですらあった。
「俺を思う通りに動かしたいならな・・・。何も、頭を下げて頼み込む事も、上物の酒を出して持て成す必要もねーんだ
よ」
「・・・・・・」
「お前さんが、ちょいと俺のいう事を聴けばそれでいいんだ」
「・・・は?」
「ククッ・・・。まだ分かんねぇのか?・・・・・・お姫様が気に入ったんだ。抱かせろって言ってんだよ」
「ばっ・・・!」
頼光は・・・「バカな!」と叫びたかったのだろうが、気持ちが高揚し過ぎてか、言葉には成りきらなかった。
そしてすぐさま、「逃げる」と謗られる事も覚悟の上、その場を去るべく立ち上がろうとしたが・・・
「待ちなっ・・・!」
ガタンッ!ガチャンッ!!
立ち上がる寸前に、伊達によって頼光は畳の上に引き倒される。並べられた膳が、派手に畳の上にバラ巻かれた。
酒の銚子も何本かが倒れ、辺りに濃厚な酒の匂いを漂わせていた。
「よっ・・・せ・・・!やめろっ!」
頼光は面を蒼白にして必死に抗うが、伊達の方では正反対に楽しげで、余裕の顔を見せている。
スーツの上着を剥がれた状態で、伊達の逞しい体躯が熊のように己の体の上へと圧し掛かってくる。その事実に、
頼光は吐き気すら覚えた。
既に上体を起こす事も出来ない状態であったが。頼光はそんな中、それでも両手を突っ撥ねて抗った。
「こいつぁー活きのいい秘書さんだぜ・・・」
「なっ・・・!」
「楽しみ甲斐がありそうだ」
「・・・!!!」
伊達の凶悪なまでの笑みに、頼光はとうとう言葉を無くしてしまう。
心の何処かでは剣桃太郎の為に。政治の為に。
これでいい。これでいいのだ。と思ってはいても・・・。
己自身の有り余るプライドに首を絞められる感覚を味わいながら。頼光は、伊達の奪うような口付けを、噛み付く事な
く受け入れるしかなかった。
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