蓮華様より頂戴しました頼光小説
「のう、桃。最近の子供ら原っぱなんぞも無いからな、自然に触れ合う機会が少ないんじゃ。切れやすい子供っちゅう
んは、もっと教育をそういう面でしっかりせんと益々増えるんじゃないか?やっぱり土筆を食べたり蓬をつんだりせんと
な…。」
「そうだな、教育課程に必要なものは以前とは明らかに違う、田沢の意見も参考にするよ」
「土筆もだがアケビなんかも旨かったな」
「ふっ、アケビは都会にはなかっただろう」
「うっ…確かに、都会育ちじゃないからな。わし」
野山の草花を食しただと?頼光は富裕層特有の苛立ちと共になぜか疎外感を軽く感じていた。少年時代の彼には
そのような記憶が無い。裕福な家庭環境で育った彼が自然に触れ合うのは、海外のプレップスクール主催の野外遊
戯で、ロッキー山脈を訪れたりタヒチの海でスキューバを愉しんだりといった状況下の話だった。同年代の子供と外で
時間を忘れて遊ぶなど、愚の骨頂と思っていたからだ。
しかし、先ほどから、ゼネコン業界で名を馳せている田沢が剣を訪ねて来て、当初はまじめな会合だと聞いていたか
ら多忙なスケジュールを融通したというのに、この二人は子供の頃の話に華を咲かせて盛りあがっているのだ。
その現場で二人しか分からない懐かしい子供時代の思い出を共有されて、疎外感どころか隔絶された気すら頼光は
してきていた。
それがわずか数週間ばかり前の話だ。今頼光は新都心構造改革の有力候補の土地に来ていた。視察目的に滞在
はわずかだ。そこは今まで頼光が見たことのない大きなまさに「原っぱ」だった。れんげの花や白いクローバーの花
が咲き誇るモンシロチョウさえ魅力的な春が残った土地だった。
「すごい…」
思いついたように心から言葉が出ていた、桃がその言葉を聞き逃すはずも無い。
「初めて見たのか?」
「ああ、これが原っぱか…」
「そうだな、白い花はシロツメクサって言ってな、女の子がよく編んで首飾りや王冠を作っていたぞ」
そういう桃の話を聞いて頼光は少年の桃の頭に冠を載せる少女たちの姿が浮かんでいた。
桃が工事責任者たちに話を聞いている間、頼光は広い土地を一人歩いていた。
ふと、足元を見ると赤い実がなっていた。それは小さな葉っぱが苺に似て、その実は赤いおいしそうな色と形から小
さな苺に見えた。
そう、思った時には頼光はそれをひとつ摘んで口に入れていた。
「…」
思ったほどまずくはないが、決してうまいとも言えない味が口の中に広がった。
「…すっぱいな」
ちいさな後悔と少しの満足を得た頼光はそのまま桃の元に戻った。
もちろんそれがイチロー並みに優れた動体視力とマサイ族も真っ青な10キロ先の人間の顔もみわけることができる
桃の目に留まらないわけが無かった。
その夜、珍しく桃が食事に誘ってきた。お互い多忙を極めて食事も満足に出来ない日が続く中で、夕食をともにする
ことは数えるほどしかない。
「お前好みの上品な味付けをする料亭を見つけた」
「…俺の好みだと?分かったそれは俺が判断する」
可愛げのない返答をする頼光を連れて桃は席についた。料理には文句を言わなかった頼光だったが、最後のデザー
トで出たフルーツにケチをつけてきた。
「苺は熊本か佐賀(いずれも指定農園)でなければ苺とは言えん。これは特にひどい。酸味が強いから他の果物の
香りも殺している」
「そう言うな、自然の物を旬に食べるのが一番良いと聞くぞ。酸味もその果物の成分、たとえばビタミンだと思えばい
いだろう」
桃が苦笑混じりにとりなしても、もちろん頼光は一度言ったことは引っ込ませない。
(…酸味が強いといえば、今日のあの苺みたいなのもひどく酸っぱかったな)
頼光は心の中で今日の出来事を思い出していた。
その様子を窺っていたのか、絶妙なタイミングで桃が口を開いた。
「今日の原っぱに蛇苺がいっぱい実をつけていたな」
「蛇苺?」
「ああ、見た目は苺の小さなやつにそっくりなんだが、食したものは必ず死ぬと言われて子供たちは誰も食べない。
大人の脅しだと思っても、いざ口にしたら嫌って言うほど殴られて止められるんだ。あの毒はすさまじいらしいな」
桃の話の途中から、頼光の頭の中にはもうすでに何も入ってきてはいなかった。
(死ぬ?死ぬだと?…まさか、いや確かに禍々しい感じがしないでもなかったが…)
「ん?どうした頼光?」
桃が声を掛ける、一瞬遅れてだが頼光はそれには答えた。
「いや、なんでもない…。しかし、そんな危険なものを原っぱに放置しておくなど危険極まりないのではないか?」
なんでもないという面ではない。蒼白に近い顔で、それでもなんとか平静を保つ鉄面皮に桃はさすがだと心の中で賛
辞を送っていた。
「たしかに危険だが、いまどきの子は原っぱになんぞ入らないし、ましてや草木など食べないだろう」
正論だった。頼光は自分の命の炎が今まさに消えかけているのを感じて、目の前が真っ暗になっていた。
「それで、どのくらいなんだ…」
「何がだ?」
「その、蛇苺を食べてどのくらいで死ぬんだ?」
頼光はすでに自分が食べていることを露呈したも同然だったが、状況判断もつかないほどに動揺していたため、普段
の彼ならやらないような間の抜けた質問を桃にしてしまっていた。
「一日だ」
「…」
余命を宣告された患者でもここまでショックは受けないだろう、そんなことを頼光は考えていた。
「一日か、昼間に食べたからあと14時間ほどしかないのか…」
つぶやくと頼光は覚悟を決めたという顔で桃に言った。
「剣、俺はあと14時間も無い。俺が死んだあと、お前が日本を変えるのを見られないのは残念だし、心残りだ…。せ
めて残された時間を俺のためにくれないか?俺のいなくなったあとこの国が、日本がどうなるのか展望を俺に聞かせ
てくれ」
茶碗を置くと桃は不思議と優しい笑顔を浮かべていた。もっとも旧知の友の伊達あたりに言わせると「碌なことを考え
ていないツラ」というらしいが。
「わかった、頼光。これから先の時間をお前のために使うよ」
下を向いて羞恥に頬を染める頼光がいつもより色っぽく見えるのは、少ない明かりやすこし入ったアルコールのせい
でもなかった。
剣、と唇の動きだけで呟くと、まるでそれが聞えたかのように呼応してきた桃の腕が、頼光の身体を仰向けにしてそ
の上に覆い被さってきた。
桃の瞳の中に頼光は自分の泣き出しそうな顔を見てしまい、眼を逸らそうとしたのも束の間、重なってきた薄い唇に
すぐ意識を奪われてしまった。
「…んっ…」
唇だけを触れ合わせるキスは一度だけで、あとはもう、吐息を奪うほど濃厚な舌が、意識も理性も、そして孤独も一
緒に奪い去りながら絡んだ。
「…ふぁ…っ…、ん…っ…」
鼻に掛かったような甘ったるい声が、キスの深さをあからさまにする濡れた音の合間に零れた。頼光は両手を桃の首
に回して、ほんの少しの隙間も埋めるように強く桃の身体を引き寄せた。
胸を叩く心臓の音すら大きく聞えた。きっと桃にも聞こえているであろう、この甘い痛みを伴う音が。
「ん……っ…はぁ…っ」
唇が離れるのを惜しむみたいに繋がりたがる唾液の名残を、桃の指が拭ってくれた。
「…続きがしたいが、ここじゃまずいか。頼光…」
何事もなかったように離れていこうとする桃の身体。
「…つる…ぎ」
頼光は身体に灯った情欲の火を隠さずに、薄い色素の桃の瞳を見上げた。いつも桃は解っていてそう言うのだった。
いつも頼光が折れるのを知っていた。
そうやって、複雑な色をした瞳で頼光の気持ちを確かめてしまう、そうしなければ確かめられないのは、どんなに望ん
でも人間が本当の意味で一つにはなれないからなのかもしれない。
「…時間がない…だから、俺を…」
桃の広い胸に押し付けるように呟いた誘いの言葉に、桃の指が頼光のシャツのボタンに掛かった。
蛇苺が死なないし、毒性も無いというのは次の日、自分が生きていることからも分かったが、しかしながら延々14時
間に渡って自分から桃に求めた事実は、身体の疲れが頼光の中で、その後、長期にわたって悔恨の念を抱かせた
ることになった。
桃はというと、能面のような美人秘書の意外な可愛いさを発見してひどく満足していた。
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蓮華さま~
可愛くもセクシーなお話をありがとうございます!
頼光、ボンボンだから何も知らないのね~~!
とかいう自分も、蛇苺って食べちゃいけないもんだとずっと思っていました。
ありり?頼光と同レベル;でも自分は頼光みたく可愛くない(笑)
いいな~ステキな総理桃にここまで思われる頼光、理想…。
だけど、仕事ではこき使われてると見た!!!
しっかり桃に食われる頼光、ツボです。
「のう、桃。最近の子供ら原っぱなんぞも無いからな、自然に触れ合う機会が少ないんじゃ。切れやすい子供っちゅう
んは、もっと教育をそういう面でしっかりせんと益々増えるんじゃないか?やっぱり土筆を食べたり蓬をつんだりせんと
な…。」
「そうだな、教育課程に必要なものは以前とは明らかに違う、田沢の意見も参考にするよ」
「土筆もだがアケビなんかも旨かったな」
「ふっ、アケビは都会にはなかっただろう」
「うっ…確かに、都会育ちじゃないからな。わし」
野山の草花を食しただと?頼光は富裕層特有の苛立ちと共になぜか疎外感を軽く感じていた。少年時代の彼には
そのような記憶が無い。裕福な家庭環境で育った彼が自然に触れ合うのは、海外のプレップスクール主催の野外遊
戯で、ロッキー山脈を訪れたりタヒチの海でスキューバを愉しんだりといった状況下の話だった。同年代の子供と外で
時間を忘れて遊ぶなど、愚の骨頂と思っていたからだ。
しかし、先ほどから、ゼネコン業界で名を馳せている田沢が剣を訪ねて来て、当初はまじめな会合だと聞いていたか
ら多忙なスケジュールを融通したというのに、この二人は子供の頃の話に華を咲かせて盛りあがっているのだ。
その現場で二人しか分からない懐かしい子供時代の思い出を共有されて、疎外感どころか隔絶された気すら頼光は
してきていた。
それがわずか数週間ばかり前の話だ。今頼光は新都心構造改革の有力候補の土地に来ていた。視察目的に滞在
はわずかだ。そこは今まで頼光が見たことのない大きなまさに「原っぱ」だった。れんげの花や白いクローバーの花
が咲き誇るモンシロチョウさえ魅力的な春が残った土地だった。
「すごい…」
思いついたように心から言葉が出ていた、桃がその言葉を聞き逃すはずも無い。
「初めて見たのか?」
「ああ、これが原っぱか…」
「そうだな、白い花はシロツメクサって言ってな、女の子がよく編んで首飾りや王冠を作っていたぞ」
そういう桃の話を聞いて頼光は少年の桃の頭に冠を載せる少女たちの姿が浮かんでいた。
桃が工事責任者たちに話を聞いている間、頼光は広い土地を一人歩いていた。
ふと、足元を見ると赤い実がなっていた。それは小さな葉っぱが苺に似て、その実は赤いおいしそうな色と形から小
さな苺に見えた。
そう、思った時には頼光はそれをひとつ摘んで口に入れていた。
「…」
思ったほどまずくはないが、決してうまいとも言えない味が口の中に広がった。
「…すっぱいな」
ちいさな後悔と少しの満足を得た頼光はそのまま桃の元に戻った。
もちろんそれがイチロー並みに優れた動体視力とマサイ族も真っ青な10キロ先の人間の顔もみわけることができる
桃の目に留まらないわけが無かった。
その夜、珍しく桃が食事に誘ってきた。お互い多忙を極めて食事も満足に出来ない日が続く中で、夕食をともにする
ことは数えるほどしかない。
「お前好みの上品な味付けをする料亭を見つけた」
「…俺の好みだと?分かったそれは俺が判断する」
可愛げのない返答をする頼光を連れて桃は席についた。料理には文句を言わなかった頼光だったが、最後のデザー
トで出たフルーツにケチをつけてきた。
「苺は熊本か佐賀(いずれも指定農園)でなければ苺とは言えん。これは特にひどい。酸味が強いから他の果物の
香りも殺している」
「そう言うな、自然の物を旬に食べるのが一番良いと聞くぞ。酸味もその果物の成分、たとえばビタミンだと思えばい
いだろう」
桃が苦笑混じりにとりなしても、もちろん頼光は一度言ったことは引っ込ませない。
(…酸味が強いといえば、今日のあの苺みたいなのもひどく酸っぱかったな)
頼光は心の中で今日の出来事を思い出していた。
その様子を窺っていたのか、絶妙なタイミングで桃が口を開いた。
「今日の原っぱに蛇苺がいっぱい実をつけていたな」
「蛇苺?」
「ああ、見た目は苺の小さなやつにそっくりなんだが、食したものは必ず死ぬと言われて子供たちは誰も食べない。
大人の脅しだと思っても、いざ口にしたら嫌って言うほど殴られて止められるんだ。あの毒はすさまじいらしいな」
桃の話の途中から、頼光の頭の中にはもうすでに何も入ってきてはいなかった。
(死ぬ?死ぬだと?…まさか、いや確かに禍々しい感じがしないでもなかったが…)
「ん?どうした頼光?」
桃が声を掛ける、一瞬遅れてだが頼光はそれには答えた。
「いや、なんでもない…。しかし、そんな危険なものを原っぱに放置しておくなど危険極まりないのではないか?」
なんでもないという面ではない。蒼白に近い顔で、それでもなんとか平静を保つ鉄面皮に桃はさすがだと心の中で賛
辞を送っていた。
「たしかに危険だが、いまどきの子は原っぱになんぞ入らないし、ましてや草木など食べないだろう」
正論だった。頼光は自分の命の炎が今まさに消えかけているのを感じて、目の前が真っ暗になっていた。
「それで、どのくらいなんだ…」
「何がだ?」
「その、蛇苺を食べてどのくらいで死ぬんだ?」
頼光はすでに自分が食べていることを露呈したも同然だったが、状況判断もつかないほどに動揺していたため、普段
の彼ならやらないような間の抜けた質問を桃にしてしまっていた。
「一日だ」
「…」
余命を宣告された患者でもここまでショックは受けないだろう、そんなことを頼光は考えていた。
「一日か、昼間に食べたからあと14時間ほどしかないのか…」
つぶやくと頼光は覚悟を決めたという顔で桃に言った。
「剣、俺はあと14時間も無い。俺が死んだあと、お前が日本を変えるのを見られないのは残念だし、心残りだ…。せ
めて残された時間を俺のためにくれないか?俺のいなくなったあとこの国が、日本がどうなるのか展望を俺に聞かせ
てくれ」
茶碗を置くと桃は不思議と優しい笑顔を浮かべていた。もっとも旧知の友の伊達あたりに言わせると「碌なことを考え
ていないツラ」というらしいが。
「わかった、頼光。これから先の時間をお前のために使うよ」
下を向いて羞恥に頬を染める頼光がいつもより色っぽく見えるのは、少ない明かりやすこし入ったアルコールのせい
でもなかった。
剣、と唇の動きだけで呟くと、まるでそれが聞えたかのように呼応してきた桃の腕が、頼光の身体を仰向けにしてそ
の上に覆い被さってきた。
桃の瞳の中に頼光は自分の泣き出しそうな顔を見てしまい、眼を逸らそうとしたのも束の間、重なってきた薄い唇に
すぐ意識を奪われてしまった。
「…んっ…」
唇だけを触れ合わせるキスは一度だけで、あとはもう、吐息を奪うほど濃厚な舌が、意識も理性も、そして孤独も一
緒に奪い去りながら絡んだ。
「…ふぁ…っ…、ん…っ…」
鼻に掛かったような甘ったるい声が、キスの深さをあからさまにする濡れた音の合間に零れた。頼光は両手を桃の首
に回して、ほんの少しの隙間も埋めるように強く桃の身体を引き寄せた。
胸を叩く心臓の音すら大きく聞えた。きっと桃にも聞こえているであろう、この甘い痛みを伴う音が。
「ん……っ…はぁ…っ」
唇が離れるのを惜しむみたいに繋がりたがる唾液の名残を、桃の指が拭ってくれた。
「…続きがしたいが、ここじゃまずいか。頼光…」
何事もなかったように離れていこうとする桃の身体。
「…つる…ぎ」
頼光は身体に灯った情欲の火を隠さずに、薄い色素の桃の瞳を見上げた。いつも桃は解っていてそう言うのだった。
いつも頼光が折れるのを知っていた。
そうやって、複雑な色をした瞳で頼光の気持ちを確かめてしまう、そうしなければ確かめられないのは、どんなに望ん
でも人間が本当の意味で一つにはなれないからなのかもしれない。
「…時間がない…だから、俺を…」
桃の広い胸に押し付けるように呟いた誘いの言葉に、桃の指が頼光のシャツのボタンに掛かった。
蛇苺が死なないし、毒性も無いというのは次の日、自分が生きていることからも分かったが、しかしながら延々14時
間に渡って自分から桃に求めた事実は、身体の疲れが頼光の中で、その後、長期にわたって悔恨の念を抱かせた
ることになった。
桃はというと、能面のような美人秘書の意外な可愛いさを発見してひどく満足していた。
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蓮華さま~
可愛くもセクシーなお話をありがとうございます!
頼光、ボンボンだから何も知らないのね~~!
とかいう自分も、蛇苺って食べちゃいけないもんだとずっと思っていました。
ありり?頼光と同レベル;でも自分は頼光みたく可愛くない(笑)
いいな~ステキな総理桃にここまで思われる頼光、理想…。
だけど、仕事ではこき使われてると見た!!!
しっかり桃に食われる頼光、ツボです。
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